基礎知識

公開日:2025/5/30
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就労移行支援の制度解説

身体障害者手帳とは?申請方法や取得するメリット・デメリットを紹介

身体障害者手帳とは?申請方法や取得するメリット・デメリットを紹介

身体障害者手帳は、身体に障害がある人に交付される手帳です。さまざまな福祉制度や障害福祉サービスを利用する際に必要となります。「身体障害者手帳とは何か」「身体障害者手帳を取得するメリットはあるのか」など、身体障害者手帳についての概要や申請方法、取得によって受けられるサービス・支援について詳しく解説します。よくある質問についてもまとめたので、身体障害者手帳の取得に悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。

身体障害者手帳とは

「身体障害者手帳」とは、身体に何らかの障害がある人に対して、都道府県や政令指定都市・中核市などの自治体が交付する障害者手帳の一種です。障害者手帳には、他に「精神障害者保健福祉手帳」と「療育手帳」があります。

身体障害者手帳は、税金の減免、公共料金の割引、交通運賃の割引といったさまざまな福祉サービスを受ける際に必須となります。経済的負担を感じている人や、日常生活におけるサポートを必要としている人には有益な手帳といえます。

また、障害者雇用での就職・転職の際には、障害者手帳の取得が必須条件となります。障害者雇用ではたらくことは、一般雇用でのはたらき方とどのように違うのか、一般雇用との違いと、実際に障害者雇用枠を利用して就職した人の事例をまとめた記事がありますので、参考にしてみてください。

※関連記事:『障害者雇用ではたらくとは?一般雇用との違いや障害者手帳の種類についてまとめました

身体障害者手帳の等級と対象者

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法第15条に基づき、身体の機能に一定以上(身体障害者障害程度等級表における障害身体障害者等級1級から6級)の障害があることを条件に交付されます。ただし、7級の障害が2つ以上重複している人も交付対象となります。

また、対象となる障害が一定期間を超えて続いており、日常生活や就労において支援を必要としている人が対象となります。

障害の種類は以下の5つに大別されています。
  • 障害の種類
    ・肢体不自由(上肢障害、下肢障害)
    ・視覚障害
    ・聴覚または平衡機能の障害
    ・音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
    ・内部障害(心臓機能障害、免疫機能障害など)
それぞれ症状や程度別に等級が設定されており、等級によって受けられる支援やサービス内容が異なる場合があります。

身体障害者手帳の申請方法

身体障害者手帳を申請する際の手順は以下の通りです。
  • 申請方法
    1.お住まいの市区町村の障害福祉窓口で、身体障害者手帳を取得したい旨を伝え、申請書類を受け取る
    2.指定医を受診して診断書を作成してもらう
    3.市区町村の担当窓口で必要書類を提出・申請する
    4.都道府県で審査され、障害等級が決定する
    5.身体障害者手帳が交付される(申請から交付までおよそ1カ月~4カ月)
  • 必要書類
    ・交付申請書
    ・指定医が作成した診断書(身体障害者診断書・意見書)
    ・印かん
    ・本人の顔写真(タテ4cm、ヨコ3cm)
    ・マイナンバーがわかる書類(個人番号カード、通知番号カード+運転免許証やパスポートなどの身元確認書類、個人番号の記載された住民票の写し)
    ※代理人が申請する場合は以下の書類も必要
    ・代理権の確認書類(委任状や申請者本人の健康保険証など)
    ・代理人の身元確認書類(個人番号カードや運転免許証)

身体障害者手帳を取得するメリット・デメリット

身体障害者手帳を取得することで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。取得するメリット・デメリットを紹介します。

メリット1:医療費、補装具などの助成が受けられる

障害者手帳の取得により、以下のような助成が受けられます。
種類 内容
医療費の助成 更生医療や自治体ごとの医療費助成など、医療費の助成を受けられる。障害の等級や自治体によって内容は異なる。
補装具の助成 障害のある人の日常生活を容易にするために必要な補装具の交付や、購入・修理にかかる費用の助成が受けられる。原則1割負担。車椅子や補聴器、視覚障害者用の眼鏡や盲人安全杖、義肢、歩行器などが対象。
リフォーム費用の助成 手すりの取り付けや段差の解消など、住環境を改善する住宅リフォーム費用の給付が受けられる。障害の種類や等級によってサービス内容や上限金額は異なる。

メリット2:各種福祉サービス・支援が受けられる

身体障害者手帳を提示すると、さまざまな公共料金の割引サービスが受けられます。自治体や事業者により内容は異なりますが、主に以下のようなサービス・支援の対象となります。
  • サービス・支援の対象例
    ・公共交通機関の運賃割引
    ・NHK放送受信料の割引
    ・携帯電話料金の割引
    ・博物館や美術館など公共施設の入場料割引
    ・公営住宅の優先入居
    ・貸付制度の利用 など

メリット3:税金が控除・減免される

身体障害者手帳を取得していると、以下の税金が控除または減免されるメリットがあります。
  • 税金の控除や減免される例
    ・所得税の控除
    ・住民税の控除
    ・相続税の控除
    ・自動車税・軽自動車税の減免
    ・自動車取得税の減免
    ・預貯金の非課税対象化
所得税と住民税の控除は、障害者手帳を取得している本人が納税者である場合に限らず、控除対象配偶者や扶養親族が身体障害者手帳を交付されている場合にも適用されます。

減免内容や、対象となる障害や等級は、自治体によって異なるため確認が必要です。
税金について、詳しくは国税庁のページを確認してください。

参考:国税庁『障害者と税』

メリット4:障害者雇用枠での就職・転職が可能になる

就職を目指す際、障害者手帳を所持していると、一般雇用だけでなく、障害者雇用枠の求人にも応募できます。障害者雇用枠での就職・転職は、一般雇用枠と比べて周囲の障害に対する理解が得やすかったり、障害に応じた調整を会社に依頼しやすかったりと、はたらきやすい環境が整っている可能性があります。

障害者雇用促進法にもとづき、企業は障害者雇用を進めています。障害がある人のはたらく選択肢が増えるだけでなく、長くはたらく環境を得られやすいのが、障害者雇用の特徴といえるでしょう。

身体障害があっても、長くはたらき続けるためには、自身の障害の特性を理解して自分に合った仕事を選ぶことが大切です。身体障害のある人が抱えやすい仕事上の悩みと、それと向き合う方法、仕事選びのポイントや利用できる支援制度についてまとめた記事がありますので、参考にしてみてください。

※関連記事:『身体障害のある方が長くはたらき続けるには?仕事選びやはたらき方のポイントを紹介

身体障害者手帳を取得するデメリットは?

身体障害者手帳を取得するデメリットは、「ない」といって良いでしょう。

取得することによって、「障害者であることを受け入れなければならないのでは」と思う人もいるかもしれませんが、手帳を取得していても提示するかどうかは自身の意思で決められます。必要がなくなったと思った場合には、返却もできます。

自身の生活をより良くするための一つの方法として考えるのが良いでしょう。

手帳の取得は任意です。不安がある人は、無理に取得する必要はありません。必要性を感じたときに取得すれば良いでしょう。

ただし、取得する際に注意しておかなければならない点として、「書類関係を整理する負担」や「手帳の交付までに時間がかかることがある」ことが挙げられます。なお、身体障害者手帳は、原則として更新はありません。ただし、障害の状態が軽減されるなどの変化が予想される場合には、手帳交付から一定期間後に再認定が実施されることがあります。次の項でも説明します。

身体障害者手帳の更新と注意点

身体障害者手帳は、原則として有効期限はなく更新の必要もありません。ただし、障害の状態が軽くなることが予想される場合、一定期間を置いて再認定が実施されるケースがあります。手帳に有効期限が記載されている場合は、期限内に再認定を受けて更新の手続きをおこなわなければなりません。また、別の障害が新たに発症した場合や、症状が重くなった場合にも再認定を受けられます。

再認定により交付が認められれば手帳は更新されますが、条件に満たないレベルの障害と判定された場合は手帳を返納しなければなりません。

また、身体障害者手帳を紛失・破損した場合には、お住まいの市区町村の担当窓口にて再交付を申請できます。手続きの際には、再交付申請書や本人のマイナンバーを確認できる書類、顔写真などが必要です。

身体障害者手帳についてよくある質問

身体障害者手帳についてよくある質問をまとめました。

Q1:身体障害者手帳の申請に費用はかかる?
身体障害者手帳の申請・取得自体に費用はかかりません。ただし、医師の診断書の作成料やそれにかかる病院の受診料、証明写真の費用などは実費となります。

Q2:身体障害がある人は身体障害者手帳を必ず取らなければならない?
身体障害者手帳の取得は任意です。

Q3:身体障害者手帳は何歳まで交付を受けられる?
身体障害者手帳に年齢制限はありません。

Q4:身体障害者手帳がなければ、自立支援医療(更生医療)を受けられない?
自立支援医療(更生医療)を受けるためには、法律上で「身体障害者」と認められる必要があります。

身体障害者は、「身体障害者福祉法(第4条)」において以下のように定義されています。
  • 身体障害者福祉法(第4条)
    「身体障害者」とは、身体上の障害がある十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けた者をいう。
※18歳未満の人は児童福祉法に位置づけられています。

そのため、自立支援医療(更生医療)を受けるためには身体障害者手帳の取得が必要となります。

Q5:身体障害者手帳がなければ、障害福祉サービスを利用できない?
障害福祉サービスを利用する条件の一つが、身体障害者手帳の取得のため、原則利用できません。
ただし、知的障害や精神障害といった他の障害や低所得、老齢など個人の状況によって障害福祉サービスを利用できる可能性もあります。お住まいの市区町村の担当窓口などに相談してみましょう。

身体障害者手帳の取得から就労まで「ミラトレ」がサポートします

今回は、身体障害者手帳について、申請方法や取得するメリット・デメリットなどを解説しました。障害福祉サービスや支援を受けることで日常生活や社会生活の制約を軽減できるのは、身体障害者手帳を取得する最大のメリットといえます。

また、身体障害のある人が長くはたらき続けるためには、自身の障害や特性を理解することが大切です。自分の適性を知り障害と向き合いながらはたらきたいという人には、就労移行支援の活用をおすすめします。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、長くはたらく力を養うために、一人ひとりの障害や特性に応じたトレーニングをおこなっています。就労に向けたトレーニングだけでなく、就職活動の支援や就職後の定着支援によって、長くはたらき続けたいという方をサポートします。身体障害者手帳の取得方法やミラトレのサービスについて知りたい方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。