基礎知識

公開日:2025/2/27
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就労移行支援の制度解説

就労移行支援は障害者手帳なしでも利用できる?利用の条件や必要書類について解説

就労移行支援は障害者手帳なしでも利用できる?利用の条件や必要書類について解説

就労移行支援の利用を検討している人の中には、「障害者手帳は必要なのか」「障害者手帳なしでも利用できるサービスはあるのか」知りたい人も多いのではないでしょうか。この記事では、就労移行支援の利用に必要な書類や利用までの流れ、障害者手帳を取得するメリットなどについて詳しく解説します。また、就労移行支援以外の就労支援機関も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

就労移行支援は障害者手帳がなくても利用できる

就労移行支援は、障害者手帳を取得していなくても利用できます。
就労移行支援の利用対象者は、「就職を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者」と定められており、障害者手帳は必須条件ではありません。

就労移行支援の利用に必須となる書類は、「障害福祉サービス受給者証」です。以下の内いずれかひとつの書類があれば障害福祉サービス受給者証を申請できます。ただし自治体によって必要な書類が異なる場合があるため、お住まいの市区町村役所の福祉窓口で確認してください。

①医師の診断書または医師の意見書
②自立支援医療受給者証
③障害者手帳

最近耳にすることが増えた発達障害グレーゾーンなど、はっきりとした診断名のつかない場合でも、医師の意見書があれば障害福祉サービス受給者証を取得できるケースもあります。ただし、その判断は自治体により異なるため、まずはお住まいの市区町村役所の福祉窓口や就労移行支援事業所に相談してみましょう。

※参考:厚生労働省『障害福祉サービスについて

就職において障害者手帳を取得するメリット

障害者手帳を取得すると、「障害者雇用」の求人に応募できるメリットがあります。障害者手帳を取得している人は、一般雇用枠に加えて障害者雇用枠への応募が可能となります。

また、障害者雇用では、就職前に実際に企業での業務を体験できる職場実習の機会を得られることもあります。就職後に「思っていたのと違った」「自分には向いていなかった」というミスマッチを防ぎ、就職後も長くはたらき続けやすい傾向にあります。

はたらき方の選択肢が増えるのは、大きなメリットといえるため、就労移行支援の利用者の中には通所しながら障害者手帳を取得する人もいます。

障害者手帳と障害福祉サービス受給者証の違い

障害者手帳とは、障害によって自立が困難な人や日常生活に支援を必要とする人に対して都道府県から交付される証明書です。対して、障害福祉サービス受給者証は、障害福祉サービスを利用する際に必要な、各市区町村より交付される証明書です。一般的に受給者証と呼ばれており、障害者福祉サービス受給者証は、障害の診断がなくても意見書があれば申請できます。利用者はこの受給者証にもとづいたサービスを受けることができます。

※関連記事:『就労移行支援事業所の利用に必要な障害福祉サービス受給者証とは?申請方法とポイントを解説

就労移行支援を利用するまでの流れ

ここでは、自分に合った就労移行支援事業所の探し方と、利用するまでの流れについて紹介します。

就労移行支援事業所の探し方

まずは、お住まいのエリアにどのような事業所があるのかを調べます。調べる際には以下の方法がおすすめです。

・インターネットで検索する
・市区町村の福祉担当課に相談する
・専門機関を利用する

インターネットで調べる際は、「就労移行支援事業所+お住まいのエリア名」で検索するか、地図検索サイトの周辺検索機能を活用すると良いでしょう。厚生労働省の「都道府県別障害者施設一覧」や、就労移行支援事業所の情報を集めたサイトの利用もおすすめです。気になる事業所があれば、公式ホームページにアクセスして特色や口コミをチェックしましょう。

市区町村の福祉担当課に相談すると、希望や障害特性に合う事業所を紹介してもらえるほか、受給者証の発行など各種手続きのサポートも受けられます。

専門家のサポートを受けたい人には、専門機関の利用がおすすめです。「障害者就業・生活支援センター」や「地域障害者職業センター」「障害者相談支援事業所」などでは、障害者職業カウンセラー、相談支援専門員といった専門家が事業所選びをサポートしてくれます。

また、ハローワークの障害者専門窓口にも専門知識をもった職員が配置されているので、相談してみると良いでしょう。

利用までの流れ

気になる就労移行支援事業所が見つかったら、次のようなステップで利用までの手続きをおこないます。
  • 利用までの全体の流れ
    (1)事業所に無料相談・資料請求
    (2)事業所の見学・無料体験を利用
    (3)受給者証の申請
    (4)特定相談支援事業所でのサービス等利用計画の作成またはセルフプランの作成
    (5)利用契約
    (6)利用開始
(1)事業所に無料相談・資料請求
自治体や専門機関でも就労移行支援事業所の情報を提供してもらえますが、事業所に問い合わせてさらに詳しく確認しましょう。事前に、自分の特性や希望の職種、疑問点などをメモ書きしておくと、相談がスムーズです。
(2)事業所の見学・無料体験を利用
まずは見学に行き、利用条件やサービス内容についての説明を受けて納得できたら、無料体験を申し込んで、事業所の雰囲気やトレーニング内容、支援員の人柄などを確かめましょう。
(3)受給者証の申請
利用したい事業所が決まったら、受給者証の申請をおこないます。申請には障害者手帳や医師の診断書・意見書などが必要です。医療機関によっては診断書の作成に2週間ほどかかる場合があるため、早めに医師に相談しましょう。
(4)特定相談支援事業所でのサービス等利用計画の作成またはセルフプランの作成
障害福祉サービスの利用希望者には、「サービス等利用計画」の作成が必要です。自分で作成する「セルフプラン」という方法もありますが、特定相談支援事業所に作成を依頼することもできます。この場合は、別途、特定相談支援事業所との契約も必要となります。
(5)利用契約
申請が認められると受給者証が発行されます。受給者証やその他必要書類を就労移行支援事業所に持参し、契約の手続きをおこないます。
(6)利用開始
支援員と一緒に「個別支援計画」を作成し、就職というゴールに向けて、小さな目標から取り組みを始めます。事業所によっては、通所日数やプログラム内容を調整してもらえるので、自分の希望や体調を伝えましょう。

就労移行支援を利用する前に知っておきたいことやよくある質問

就労移行支援の利用を検討している人が、利用前に知っておいた方が良いことや、よくある質問について紹介します。

就労移行支援の利用期間は?

就労移行支援の利用期間は原則最大2年間と定められています。
就職できるまで利用できるのではなく、2年間の期間で訓練や実習をおこなって就職を目指します。

また、「期間中に病気や体調不良などで長期間利用できなかった」「就職活動が難航して就職できなかった」など、正当な理由が認められた場合に限り、最大1年間の利用期間延長申請がおこなえる場合があります。
ただし、延長が認められるのは「就労の意欲があり就職の見込みがある」と判断された人のみであり、申請すれば誰でも利用延長が認められるわけではない点には注意が必要です。

就労移行支援にかかる利用料金は?

就労移行支援の自己負担額は厚生労働省によって定められており、前年の収入によって負担額の上限が決められています。収入は、18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得となります。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(※1) 0円
一般1     市町村民税課税世帯
(所得割16万円未満:※2)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム等利用者を除きます。(※3)
9,300円
一般2 上記以外 3万7,200円

※1 3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入がおおむね300万円以下の世帯が対象となります。
※2 収入がおおむね600万円以下の世帯が対象になります。
※3 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム等利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

詳細はこちらのページをご覧ください。

就労移行支援は利用しても意味がないって本当?

ネット上などで、「就労移行支援サービスを利用しても意味がない」という意見を目にした人もいるかもしれませんが、実際に利用した人の中には、期間内に就職した人や生活が安定した人が多くいるのも事実です。就労移行支援を意味のあるものにするためには、自分に合った事業所を選ぶこと、決められた通所予定を守って遅刻早退欠席なく通うことが基本となります。

自分に合った事業所選びのポイントについて、以下の記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。

※関連記事:『就労移行支援の利用前に知っておきたい、事業所選びのポイント

就労移行支援を利用した方がいい人は?

就労移行支援は、障害や精神疾患に対する合理的配慮を受けながら就職を目指したい人、病気や障害により仕事を休職・退職した人の就職をサポートするサービスです。そのため、「就職活動を1人でおこなうのが難しい」「はたらくために必要なスキルを身につけたい」といった就労に向けて不安や課題がある人におすすめの制度です。

そのほかの就労支援機関

就労移行支援のほかに利用できる就労支援機関を紹介します。

ハローワーク

ハローワークには、障害者の就労に特化した「専門援助部門」があります。専門援助部門は、基本的には障害者雇用の求人を紹介して就労をサポートする部門ですが、障害について専門的な知識をもった担当者がいるため、障害者手帳を取得していなくても仕事に関する情報提供や就職に関する相談支援を受けられます。

就労定着支援

就労定着支援は、「就職後のサポート」を目的とした障害福祉サービスのひとつで、就労移行支援などの就労系障害福祉サービスから障害者雇用の求人に応募して就労した人が利用できます。

就労定着支援では、就職後の不安や悩みに対して就労定着支援員によるサポートが受けられます。利用期間は、就職後7カ月目から就職後3年6カ月目までの間で最長3年間です。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある人に対して職業準備支援やリワーク支援などさまざまな職業リハビリテーションを提供している機関です。全国の各都道府県に最低1カ所ずつ設置されています。

障害者職業カウンセラーや相談支援専門員、ジョブコーチなどを配置しており、専門性の高い支援を受けられるのが特徴です。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害がある人の「就労支援」と「生活支援」を一体的におこなう機関です。障害のある人の生活基盤を整え、安心してはたらける環境づくりをサポートしてくれます。

職業スキルの確認や履歴書作成、面接準備のサポートなど就労前の支援から、就労後の悩み・課題の解決に加え、日常生活に関する支援もおこなっているため、幅広い支援を受けられるのが特徴です。

手帳なしでも就労移行支援事業所は利用可能

就労移行支援サービスの利用に必須なのは、障害者手帳ではなく障害福祉サービス受給者証です。受給者証は、医師の診断書もしくは意見書があれば申請できます。障害者手帳がなくても就労移行支援を利用できますが、一般雇用枠と障害者雇用枠の両方から自分に合うはたらき方を選べるのは、障害者手帳を取得する大きなメリットです。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、障害のある人が自分らしいはたらき方を見つけ、長くはたらき続けられるようサポートしています。利用者の障害特性を理解した上で一人ひとりの課題や能力に配慮しながら、就職までの準備はもちろん、職場への定着までを総合的に支援します。

また、障害者手帳の申請についても助言やサポートをおこなっています。ミラトレの利用方法やサービスについて気になる方は、気軽にお問い合わせください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。