基礎知識

公開日:2026/6/30
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就職ガイド –はたらく選択肢-

解離性同一性障害のある方のはたらき方は?仕事での工夫や支援機関を解説

解離性同一性障害のある方のはたらき方は?仕事での工夫や支援機関を解説

解離性同一性障害の診断を受けている方や、自分自身がそうかもしれないと感じている方の中には、「今の仕事を続けられるのか」「いつか職場で大きな失敗をしてしまわないか」と不安を抱えることがあります。突然の人格の交代や記憶の抜け漏れにより、仕事に影響が生じることもありますが、症状と上手に付き合いながら、安定してはたらき続けている方も多くいます。

本記事では、解離性同一性障害の特徴や原因、仕事で生じやすい困りごと、長くはたらき続けるための工夫、向いている仕事の傾向、相談できる支援機関まで詳しく解説します。

【この記事で分かること】
●解離性同一性障害の特徴と原因
●仕事で直面しやすい困りごとと対処の工夫
●症状に合ったはたらき方や向いている仕事の傾向
●困ったときに相談できる支援機関

解離性同一性障害とは?

解離性同一性障害とは、一人の人間の中に複数の人格が存在し、本人の意思とは関係なく交代して現れる精神疾患です。以前は「多重人格障害」と呼ばれており、医学的には「解離性同一症」という名称が用いられることもあります。解離性同一性障害は、複数ある解離性障害の一種として位置づけられ、通常であれば思い出せるはずの出来事や情報を思い出せなくなるという特性がみられます。

解離性障害には複数の種類があり、それぞれ現れる症状が異なります。
種類 主な症状
解離性健忘 個人的な出来事や日々の記憶の一部が抜け落ちる
離人感・現実感消失症 自分自身や周囲の世界が現実のものと感じられなくなる
解離性とん走 記憶が抜け落ちた状態で、普段の環境から突然逃避し姿を消す
解離性同一性障害 複数の人格が交代して現れ、記憶の空白を伴う
特定不能の解離性障害 上記いずれにも当てはまらない解離の症状

※参考:MSDマニュアル家庭版『解離性同一症 - 10. 心の健康問題

解離性同一性障害の原因

解離性同一性障害は、ストレスや心的外傷が深く関係していると考えられています。多くの場合、幼少期に受けた身体的・性的・心理的な虐待やネグレクトなど、耐え難い心的外傷への防衛反応として発症するとされています。
発達の途中にある子どもが極度のストレスを繰り返し受けると、感情や記憶の統合が十分に進まず、つらい体験を意識から切り離すことで心を守ろうとします。こうした解離が積み重なることで、複数の人格が形成されると考えられています。

解離性同一性障害の特徴

解離性健忘

解離性健忘とは、日常の特定の時間や、自分が取った行動の記憶が完全に抜け落ちる症状です。特定の出来事・期間を思い出せない、見覚えのないメモを見つける、気づいたら想定していない場所にいるなど、さまざまな形で現れます。記憶が欠けている期間があることに、本人が気づくケースも少なくありません。

人格の交代

人格の交代とは、自分とは異なる年齢・性別・口調、趣味嗜好を持つった「交代人格」が存在し、本人の意思とは関係なくスイッチング(人格交代)して現れる症状です。交代している間の記憶は、本来の自分(主人格)には残らないことが多く、職場では「急に話し方が変わる」「得意な作業ができなくなる」といった形で、周囲に気づかれることもあります。

解離性同一性障害のある方が仕事で直面しやすい困りごと

仕事の場面では、次のような困りごとが生じやすいとされています。
  • 困りごと
    ●別人格のときに行った業務内容ややりとりを覚えておらず、締め切りの遅れや対応漏れが起こる
    ●人格によって能力やスキルが異なるため、業務の質にばらつきが生じる
    ●仕事上のトラブルやストレスがきっかけとなり、人格交代が起こる
    ●人格が交代することで、同僚への態度や言葉遣い、仕事の進め方が日によって変わってしまう
こうした困りごとは、本人の努力不足や不真面目さによるものではなく、疾患の特性として生じるものです。一人で抱え込まず、後述する工夫や支援機関を活用しながら向き合うことが大切です。

解離性同一性障害のある方が長くはたらき続けるための工夫

症状を完全になくすことは難しくても、ITツールの活用や周囲のサポート、人格間の連携によって、安定してはたらき続けられるケースもあります。

メモやITツールを活用する

記憶が抜け落ちる可能性を前提としてメモやITツールを活用し、業務指示や作業内容を記録しておくことで、後から内容を確認できます。また、スマートフォンのリマインダー機能でタスクを管理したり、会話を音声メモで残したりすることも有効です。これらの工夫により、後から記憶が欠けている時間帯の状況を把握しやすくなり、作業漏れやミスの防止につながります。

人格同士の交換日記・共有ノートをつくる

人格間で情報を共有するノートを用意し、記憶の空白の時間を補う方法もあります。それぞれの人格が知っている内容を書き残すことで、業務の引き継ぎ漏れを防ぎやすくなります。人格間の情報共有が進むことは、症状の改善につながる場合があるともいわれています。

職場での配慮を求める

自身の症状や特性に合わせて、必要な合理的配慮について企業側と話し合うことも、長くはたらき続けるための大切な工夫です。合理的配慮の例として、業務内容やの変更、勤務時間の調整、通院のための休暇の許可などが挙げられます。障害者雇用枠を活用し、症状への理解を前提とした環境ではたらく方法も検討できます。

※関連記事「合理的配慮とは?就職時の流れや企業での具体例をわかりやすく紹介

解離性同一性障害のある方に向いている仕事

仕事量のノルマが少なく、自分のペースを守りやすい仕事を選ぶことで、長く安定してはたらき続けられるようになります。

事務職

事務職は、データ入力や書類作成など、決まった手順で進める作業が中心です。マニュアルやチェックリストを活用しやすいため、業務の抜け漏れを防ぎながら取り組むことができます。一方で、電話対応や来客対応など、その場で柔軟に判断する業務は、人によっては負担を感じる場合があります。

軽作業

軽作業は、対人でのやりとりが少なく、マニュアルに沿って進められる作業が多い仕事です。決まった手順を繰り返すことで、業務の質を保ちやすいというメリットがあります。また、作業内容が比較的明確であるため、自分のペースで取り組みやすいのが特徴です。

清掃業

清掃業は、単独で作業を進める場面が多く、自分のペースで進めやすい仕事です。対人でのやりとりが比較的少ないため、コミュニケーションによるストレスを感じにくい傾向があります。また、業務内容が明確でルーティン化しやすく、手順を覚えることで安定してはたらきやすい環境が整っていることも特徴です。

デザイナー・ライター、プログラマ

デザイナーやライター、プログラマは、在宅勤務が可能な場合が多く、自分のペースで作業を進めやすい仕事です。一方で、納期管理が必要となり、場合によっては緊急の修正対応が求められるため、人によっては負担に感じる場合があります。

解離性同一性障害のある方が仕事やはたらき方について相談できる支援機関

解離性同一性障害のある方が、仕事やはたらき方について相談できる支援機関としては、主に次の4つが挙げられます。
  • 相談できる4つの支援機関
    ●ハローワークの専門援助窓口
    ●地域障害者職業センター
    ●障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)
    ●就労移行支援事業所

ハローワークの専門援助窓口

ハローワークには、障害のある方の就職をサポートする専門窓口があります。障害者手帳の有無にかかわらず利用でき、求人紹介から応募書類の作成、面接対策、就職後の定着支援まで、一貫したサポートを無料で受けられます。また、精神障害に詳しい相談員が在籍している場合もあり、症状や配慮事項の伝え方について相談することも可能です。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方の就職や職場定着を支援する専門機関です。職業評価や職業準備訓練を通じて行、一人ひとりの特性や希望に応じたサポートを提供しています。ハローワークなどの関係機関と連携しながら、就職に向けた支援計画の作成や就職後の職場適応に関する支援も行っています。

障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)

障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)は、障害のある方の就業面と生活面の両方を一体的に支援する機関です。生活リズムや健康管理など日常生活に関するについても相談にも対応しています。就業担当と生活担当が連携しながらサポートを行うため、安定してはたらき続けるための支援を受けられることが特徴です。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある方が自分らしくはたらくために、就職に必要な知識やスキルを身につけられる福祉サービスです65歳未満の方を対象としており、利用期間は原則2年間です。通所しながら生活リズムを整え、コミュニケーションやビジネスマナー、パソコンスキルなどを学べるほか、職場実習などを通じて実際の仕事を体験することもできます。また、就職後の職場定着に向けた支援を受けられます。

解離性同一性障害のある方が休職・退職をする場合は?

症状によっては、無理をせず療養することが必要な場合もあります。休職や退職を検討する際は、まず主治医に相談したうえで、上司や人事部にも状況を伝えることが大切です。

休職や退職時に利用できる経済的支援制度

休職や退職の際に利用できる、主な経済的支援制度は次のとおりです。
制度名 概要 対象者
傷病手当金 病気やケガで仕事を休み、給与を受け取れない場合に、健康保険から生活を支えるための給付を受けられる制度 会社の健康保険に加入しており、病気やケガで仕事を休んでいる方
自立支援医療制度 精神疾患で継続的に通院している方の医療費負担を軽減する制度
自己負担額が原則1割となるため、治療を継続する際の経済的な負担を軽減
精神疾患により継続的な通院治療が必要な方
精神障害者保健福祉手帳 精神疾患により、日常生活や社会生活に制約があることを証明する手帳 精神疾患の初診日から6カ月以上経過し、一定の障害状態にある方
障害年金 病気やケガによって日常生活や社会生活に支障が生じている場合に、生活を支えるための給付を受けられる公的な制度 原則として20歳から64歳までの間に病気やケガを発症し、日常生活や社会生活に支障が生じている方
雇用保険の基本手当(失業給付) 離職した方が再就職を目指して求職活動を行う間の生活を支えるために支給される給付 雇用保険に加入していた方

いずれの制度も申請の条件や手続きが定められているため、利用を検討する際は、勤務先の担当部署や年金事務所、医療機関のソーシャルワーカーなどに相談することをおすすめします。

解離性同一性障害に関するよくある質問

Q.解離性同一性障害を隠してはたらく(クローズド就労)ことは可能ですか?

A.解離性同一性障害を職場に隠してはたらくことは可能ですが、無理は禁物です。まずは症状の頻度を把握し、主治医と相談しながら、開示する(オープン就労)かどうかを検討しましょう。体調が仕事に影響しそうな場合は、信頼できる上司や産業医に必要最小限の情報の共有する方法もあります。

Q.仕事中に粗暴な人格に交代しないか不安な場合はどうすれば良いですか?

A.人格が交代する兆しを記録し、気づいた時点で早めに休憩を取りましょう。深呼吸をする、周囲の音や手触りなど五感に意識を向けるなど、自分が落ち着ける手順をあらかじめメモしておくと安心です。緊急時の連絡先や対応方法を信頼できる同僚と共有し、必要に応じて早退できるルールを職場と合意しておくことも有効です。主治医とも相談しながら職場での対処計画をつくり、安全面とはたらきやすさを優先して環境を整えていきましょう。

解離性同一性障害の症状でお困りの方は「ミラトレ」にご相談ください

解離性同一性障害は、気づかないうちに記憶の欠落や人格状態の変化がみられることがあります。メモやツールを活用した記録、人格間の情報共有、職場への合理的配慮の相談などが安定した就労につながります。さらに就労移行支援事業所の活用も、就職や職場定着のための有効な選択肢です。
就労移行支援事業所「ミラトレ」では、障害のある方が無理なく、安定してはたらき続けるための支援を受けられます。対人ストレスの少ないルーティンワークの訓練や、症状の特性に理解のある企業への就職活動支援など、一人ひとりに合わせたサポートを行っています。解離性同一性障害の症状やはたらき方にお困りの場合は、就労移行支援事業所「ミラトレ」にお気軽にご相談ください。

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監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員