基礎知識

公開日:2026/6/30
  • X
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Email

就職ガイド –はたらく選択肢-

先延ばし癖の原因はADHD?ついつい後回しにする人が仕事で使える対策

先延ばし癖の原因はADHD?ついつい後回しにする人が仕事で使える対策

「やらなければならない仕事があるのに、なかなか手を付けられない」「締め切り直前になって慌てて作業してしまう」と悩む方は少なくありません。何度も先延ばしを繰り返すことで、「自分は怠けているだけではないか」と自己嫌悪に陥ることもあるでしょう。
しかし、先延ばしは意志の弱さではなく、ADHDの特性や脳のはたらきが関係している場合があります。原因を正しく理解し、自分に合った対策を取り入れることで、仕事の進め方を改善できる可能性があります。
本記事では、ADHDの特性がある方が先延ばしをしてしまう原因と、仕事で実践しやすい対策を解説します。

【この記事で分かること】
●ADHDの特性がある方が先延ばしをしてしまう主な原因
●仕事で実践しやすい先延ばし対策の具体例
●一人で改善が難しい場合に利用できる相談先や支援機関

「先延ばし癖」がある人の特徴

先延ばし癖に悩む人は、「やらなければならないと分かっているのに行動に移せない」という共通の困りごとを抱えています。単なる怠けではなく、仕事や日常生活に支障をきたすことも少なくありません。例えば、以下のような経験が挙げられます。

  • ●大事な連絡やメールの返信を後回しにしてしまう
    ●やるべき仕事があるのにスマートフォンの確認や別の作業に逃げてしまう
    ●タスクが多いと何から始めれば良いか分からなくなる
先延ばしを繰り返すと、納期遅れやケアレスミスが増え、職場での評価や信頼に影響することもあります。
また、「またできなかった」「なぜ自分だけうまくできないのだろう」と自己嫌悪に陥り、さらに行動しづらくなる悪循環につながることもあります。

先延ばし癖の背景にあるADHDの特性

先延ばし癖がなかなか改善しない場合、性格の問題ではなくADHD(注意欠如多動症)の特性が関係している可能性があります。
個人差はありますが、ADHDには「不注意」「多動性」「衝動性」といった特性があり、これらがタスクへの着手を難しくすることがあります。例えば、優先順位をつけるのが苦手、やるべきことに意識を向け続けにくい、興味のない作業に集中しづらいといった特徴です。「やる気がない」のではなく、「やろうとしても取りかかれない」状態に悩んでいる場合は、ADHDの特性が影響しているかもしれません。まずは原因を理解することが、適切な対策への第一歩です。

なぜADHDの特性がある方は「先延ばし」してしまうのか

ADHDの特性がある方が先延ばしをしてしまうのは、本人の意志の弱さや怠け癖が原因とは限りません。ドーパミンのはたらきの偏りやワーキングメモリの弱さなどが影響し、行動に移すこと自体が難しくなっている場合があります。そのため、先延ばしは「甘え」ではなく、特性によって生じる困りごとの一つとして理解することが大切です。

ドーパミンのはたらきの偏りにより、小さな報酬に魅力を感じやすい

ADHDのある方は、意欲や報酬に関わる神経伝達物質である「ドーパミン」のはたらきに偏りがあると考えられています。そのため、数週間後や数カ月後に得られる大きな成果よりも、ゲームなどの目の前の小さな課題への報酬に魅力を感じやすいのです。やらなければいけないことを後回しにしてしまい、目の前の小さな報酬を受け取ることに夢中になってしまうことがあります。

ワーキングメモリの弱さで計画立案が難しい

ADHDの特性がある方は、情報を一時的に保持しながら整理する「ワーキングメモリ」のはたらきが弱い傾向があります。
「何から始めれば良いのか」「どの順番で進めるべきか」といった情報を頭の中で整理しづらく、タスクの全体像が見えにくくなりやすいです。その結果、作業に取りかかるまでのハードルが高くなり、先延ばしにつながることがあります。

時間管理や見通しを立てることへの苦手意識がある

ADHDのある方の中には、時間の経過を把握したり見積もったりすることが苦手な「タイム・ブラインドネス」の傾向が見られる場合があります。
「まだ時間がある」「すぐ終わるだろう」と考えていたものの、実際には想定以上に時間がかかり、締め切り直前になって慌てるケースも少なくありません。このような時間感覚のズレが、先延ばしを繰り返す原因になることがあります。

完璧主義に陥りやすく、プレッシャーを感じやすい

ADHDのある方の中には、過去の失敗経験から「次は失敗したくない」という思いが強くなり、完璧主義に陥る方もいます。
高い理想を設定しすぎると、「完璧にできる自信がない」「失敗するくらいなら始めたくない」と感じてしまうことがあります。その結果、作業への心理的なハードルが高まり、なかなか着手できなくなります。また、完璧にするために下準備に時間がかかり、結果作業に取りかかれないといった場合もあります。

このように、先延ばしの背景にはさまざまな特性が関係します。自分を責めるのではなく、特性に合った対策を取り入れることが大切です。

仕事に役立つ、ADHDのある方の先延ばし癖対策

ADHDによる先延ばし対策として重要なのは、自分の特性に合わせて仕事の進め方や環境を工夫することです。タスクの細分化、時間管理ツールの活用、段階的な締め切りの設定、作業環境の整備などがあります。
ここでは、仕事で実践しやすい先延ばし対策をご紹介します。

タスクの見える化・細分化

先延ばしを防ぐためには、タスクをできるだけ小さく分解することが効果的です。
「企画書を作成する」「メールに返信する」などの大きなタスクは、何から始めれば良いか分からず着手のハードルが高くなりがちです。そのため、まずは5〜10分程度で終わる作業まで細分化し、一つずつ取り組みましょう。以下は、仕事でよくあるタスクを細分化した例です。
大きなタスク 細分化したタスク例
企画書を作成する ①関連資料を探す
②関連資料を開く
③構成・見出しを作る
④書きたい内容を箇条書きで書き出す
⑤箇条書きを文章に整える
⑥誤字脱字・デザインのチェック
⑦○時に〇〇さんに提出
メールの返信 ①メールアプリを開く
②伝えたい内容を箇条書きにする
③下書きを作る
④送信する

タスクを細分化すると、「何をすれば良いか」が明確になり、作業に取りかかりやすくなります。また、小さな目標を達成するたびに達成感を得られるため、モチベーション維持にもつながります。 タスクを完了するごとに好きなお菓子を食べる、短時間休憩を取るなど、自分なりのご褒美を設定するのも有効です。

タイマーやアラームを使った時間管理

時間管理が苦手な場合は、タイマーやアラームで時間を可視化するのもおすすめです。
例えば、「まずは10分だけ取り組む」「25分作業して5分休憩する」などの方法を取り入れると、作業への心理的な負担を軽減できます。
また、アラームを設定しておくことで、作業を開始するタイミングを意識しやすくなり、着手するきっかけにもなります。加えて、ADHDのある方にみられる、特定の作業に没頭して時間を忘れてしまう「過集中」を防ぐための工夫としても役立ちます。
時間感覚だけに頼らず、タイマーやアラームなどのツールを活用することが大切です。

段階的な締め切りの設定

締め切り直前まで作業に取りかかれない場合は、最終期限とは別に中間目標を設定しましょう。
例えば、提出期限が1週間後であれば、「3日後までに構成を完成させる」「5日後までに下書きを終える」といったように、小さな締め切りを設けます。
また、上司や同僚に進捗状況を共有したり、中間報告の機会を作ったりする方法も有効です。自分だけで管理するのが難しい場合は、周囲の力を借りながら進めることも検討しましょう。

作業環境の整備

作業中の誘惑を減らす工夫も効果的です。スマートフォンを手の届かない場所に置く、不要なブラウザのタブを閉じる、関係のない書類を片付けるなど、集中を妨げる要素をできるだけ減らしましょう。
また、感覚過敏がある方は、周囲の音や光が集中を妨げている可能性があります。ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓の使用や、照明の調整、静かな場所で作業するなど、自分が集中しやすい環境を整えることも大切です。
このように、仕事の進め方や環境を工夫することで、先延ばしによる負担を軽減しやすくなります。まずは取り入れやすい方法から試してみましょう。

※関連記事「聴覚過敏とは?セルフチェックと日常生活・仕事での対策方法を解説

ADHDのある方の先延ばし対策に役立つ専門家のサポート

先延ばしへの対策は自分一人でも取り組めますが、改善が難しい場合は専門家のサポートを受けることも大切です。無理に一人で解決しようとせず、自分に合った支援を活用することで、仕事や生活の負担を軽減できる可能性があります。

医療機関

日常生活や仕事に大きな影響が出ている場合は、医療機関への相談を検討してみましょう。
ADHDの診断を受けることで、自分の特性を客観的に理解しやすくなります。また、症状によっては薬物療法が選択されることもあり、不注意や衝動性などの改善により、タスクへ取り組みやすくなる場合があります。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害のある方やその家族から相談を受け付けている機関です。
先延ばし癖や時間管理の悩みに対して、タスク管理の工夫や生活面でのアドバイスを受けられる場合があります。また、地域で利用できる支援制度やサービスについての情報提供を受けられます。

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、心の健康に関する相談ができる公的機関です。
ADHDによる困りごとだけでなく、先延ばしによるストレスや自己嫌悪、人間関係の悩みなどについても相談できます。本人だけでなく家族からの相談を受け付けているセンターもあります。

就労移行支援事業所

仕事に関する先延ばしで悩んでいる方には、就労移行支援事業所の利用も選択肢の一つです。
就労移行支援事業所では、就職に向けた訓練だけでなく、擬似就労などのプログラムを通じて実際の業務を想定した練習を行えます。タスクが発生時した際の対応方法や優先順位の付け方、スケジュール管理などを実践的に学べます。
また、支援員と一緒に自分に合った対策方法を考えながら、無理のない形で習慣化を目指せます。

※関連記事「就労移行支援とは

ADHDのある方の先延ばしに関するよくある質問

Q.ADHDのある方が先延ばし癖を直す方法はありますか?

A.意志の力だけで改善しようとすると、負担が大きくなりがちです。タスクの細分化やタイマーの活用、中間締め切りの設定など、自分の特性に合わせた工夫を取り入れることが大切です。また、一人での改善が難しい場合は、医療機関や支援機関に相談することも検討してみましょう。

Q.職場の人に「先延ばししてしまう特性」をどのように説明すればいいですか?

A. 「タスクを後回しにしてしまいます」とだけ伝えると、やる気の問題だと誤解される可能性があります。そのため、「締め切りの少し前に進捗確認をお願いしたい」「タスクを細かく整理すると取り組みやすい」など、自分が実践している対策や必要な配慮をあわせて伝えることが大切です。これにより、周囲の理解を得やすくなります。

ADHDの特性があり先延ばしなどの困りごとがある方は「ミラトレ」にご相談ください

ADHDのある方の先延ばしは、意志の弱さや怠けが原因ではなく、脳の実行機能や「タイム・ブラインドネス」などの特性が関係している場合があります。改善するめには、タスクの細分化や時間管理ツールの活用、作業環境の整備など、自分に合った工夫を取り入れることが大切です。一人での対策に限界を感じる場合は、医療機関や支援機関への相談も検討しましょう。特に仕事に関する悩みがある方は、就労移行支援事業所で実践的な訓練やサポートを受けながら、自分に合った働き方を見つける方法もあります。

就労移行支援事業所の「ミラトレ」では、一人ひとりの特性やお困りごとに合わせた支援を行っています。擬似就労の時間を設けているため、実際の仕事を想定しながらタスク管理や時間管理の方法を身につけることが可能です。タスクの見える化やスケジュール管理、段階的な目標設定などを通じて、仕事を安定して続けるための習慣づくりをサポートしています。まずは、お気軽に「ミラトレ」の支援員にご相談ください。

まずは、お気軽に
支援員にご相談ください

ご自身のお困りごとや
就職について
知りたいことも
支援員が親身にお話をうかがいます

見学・相談を申し込む

ミラトレの確かな実績 ミラトレの確かな実績

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)

パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
■国家資格キャリアコンサルタント
■障害者職業生活相談員