基礎知識

公開日:2025/5/30
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就労移行支援の制度解説

身体障害とは?種類や症状・等級、利用できるサービスについて解説

身体障害とは?種類や症状・等級、利用できるサービスについて解説

身体障害とは、身体の機能に障害がある状態を指し、身体障害者手帳では、種類や症状、程度によって1~7級の等級が厚生労働省により定義されています。身体障害によって、日常生活や仕事で支障をきたしている場合、専門の支援機関や福祉サービスを利用できます。

この記事では、身体障害の種類とそれぞれの等級をはじめ、身体障害のある人が利用できるサービスや支援制度などについて紹介します。

身体障害とは

身体障害とは、身体の機能に障害がある状態を指します。身体障害の原因は、先天的な疾病や機能不全によるものと後天的な疾病や事故などによるものがあります。

身体障害は、「身体障害者福祉法(第4条)」において以下のように定義されています。

  • 身体障害者福祉法(第4条)
    「身体障害者」とは、身体上の障害がある十八歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
    ※18歳未満の人は児童福祉法に位置づけられています。
厚生労働省の「令和6年版 障害者白書(全体版)」によると、全国の身体障害者(障害児を含む)の概数は436万人となっています。これは人口1,000人あたり34人、国民のおよそ3.4%の人は、身体上に何らかの障害があることになります。

また、身体障害者手帳は、各都道府県により指定を受けた医師の診断書と意見書により交付されます。身体障害の程度によって1〜7の等級に分けられ、障害者手帳にも記載されます。

身体障害の種類と等級について

身体障害の種類は、身体障害者福祉法により5つに分類されています。

・肢体不自由(上肢障害、下肢障害)
・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
・内部障害

それぞれの概要と等級について以下で紹介します。

肢体不自由(上肢障害、下肢障害)

肢体不自由とは、上肢・下肢・体幹に障害がある状態を指し、日常生活に支障が出ている状態です。上肢は肩から手先まで、下肢は股関節から足先まで、体幹は胴体のことを指し、障害の程度によって1級から7級までの等級に区分されます。

肢体不自由の等級の判断基準は以下の通りです。上肢・下肢・体幹ごとに設定されています。

【肢体不自由の等級】
基準
等級 上肢 下肢 体幹
1級 1.両上肢の機能をほとんど失っているもの
2.両上肢を手関節以上で欠くもの
1.両下肢の機能をほとんど失っているもの
2.両下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの
体幹の機能障害により座っていることができないもの
2級 1.両上肢の機能の著しい障害
2.両上肢のすべての指を欠くもの
3.一上肢を上腕の2分の1以上で欠くもの
4.一上肢の機能をほとんど失っているもの
1.両下肢の機能の著しい障害
2.両下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの
1.体幹の機能障害により「座る」「立つ」という姿勢を保つことが困難なもの
2.体幹の機能障害により立ち上がることが困難なもの
3級 1.両上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの
2.両上肢のおや指及びひとさし指の機能をほとんど失っているもの
3.一上肢の機能の著しい障害
4.一上肢のすべての指を欠くもの
5.一上肢のすべての指の機能をほとんど失っているもの
1.両下肢をショパール関節以上で欠くもの
2.一下肢を大腿の2分の1以上で欠くもの
3.一下肢の機能をほとんど失っているもの
体幹の機能障害により歩行が困難なもの
4級 1.両上肢のおや指を欠くもの
2.両上肢のおや指の機能をほとんど失っているもの
3.一上肢の肩関節、肘関節または手関節のうち、いずれか一関節の機能をほとんど失っているもの
4.一上肢のおや指及びひとさし指を欠くもの
5.一上肢のおや指及びひとさし指の機能をほとんど失っているもの
6.おや指またはひとさし指を含めて一上肢の三指を欠くもの
7.おや指またはひとさし指を含めて一上肢の三指の機能をほとんど失っているもの
8.おや指またはひとさし指を含めて一上肢の四指の機能の著しい障害
1.両下肢のすべての指を欠くもの
2.両下肢のすべての指の機能をほとんど失っているもの
3.一下肢を下腿の2分の1以上で欠くもの
4.一下肢の機能の著しい障害
5.一下肢の股関節または膝関節の機能をほとんど失っているもの
6.一下肢が健側に比べて10センチメートル以上または健側の長さの10分の1以上短いもの
5級 1.両上肢のおや指の機能の著しい障害
2.一上肢の肩関節、肘関節または手関節のうち、いずれか一関節の機能の著しい障害
3.一上肢のおや指を欠くもの
4.一上肢のおや指の機能をほとんど失っているもの
5.一上肢のおや指及びひとさし指の機能の著しい障害
6.おや指またはひとさし指を含めて一上肢の三指の機能の著しい障害
1.一下肢の股関節または膝関節の機能の著しい障害
2.一下肢の足関節の機能をほとんど失っているもの
3.一下肢が健側に比べて5センチメートル以上または健側の長さの15分の1以上短いもの
体幹の機能の著しい障害
6級 1.一上肢のおや指の機能の著しい障害
2.ひとさし指を含めて一上肢の二指を欠くもの
3.ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能をほとんど失っているもの
1.一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
2.一下肢の足関節の機能の著しい障害
7級 1.一上肢の機能の軽度の障害
2.一上肢の肩関節、肘関節または手関節のうち、いずれか一関節の機能の軽度の障害
3.一上肢の手指の機能の軽度の障害
4.ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能の著しい障害
5.一上肢のなか指、くすり指及び小指を欠くもの
6.一上肢のなか指、くすり指及び小指の機能をほとんど失っているもの
1.両下肢のすべての指の機能の著しい障害
2.一下肢の機能の軽度の障害
3.一下肢の股関節、膝関節または足関節のうち、いずれか一関節の機能の軽度の障害
4.一下肢のすべての指を欠くもの
5.一下肢のすべての指の機能をほとんど失っているもの
6.一下肢が健側に比べて3センチメートル以上または健側の長さの20分の1以上短いもの

※参照:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

視覚障害

視覚障害とは、視力や視野などに障害があり、見ることが不自由または不可能な状態かつ日常生活に支障をきたしている状態を指します。眼鏡やコンタクトレンズなどで、生活に支障のないレベルまで視力を矯正できる人は視覚障害に当てはまりません。

視覚障害には大きく分けて「視力障害」「視野障害」「色覚障害」「光覚障害」の4種類があり、障害者手帳の対象となるのは「視力障害」と「視野障害」の2つです。

視覚障害の等級の認定基準は、以下の通りです。

【視覚障害の等級】
等級 基準
1級 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)の和が0.01以下のもの
2級 1.両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの
2.両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95パーセント以上のもの
3級 1.両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
2.両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90パーセント以上のもの
4級 1.両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの
2.両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
5級 1.両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの
2.両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
6級 一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの
7級

※参照:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

聴覚または平衡機能の障害

聴覚障害は、音を聞く、または感じる機能に何らかの障害があり、音が聞こえない、または聞こえにくい状態を指します。等級は2〜4級、6級の4つの基準が設けられています。

平衡機能の障害とは、姿勢を調節する機能に障害があり、起立や歩行などに支障をきたす状態のことです。平衡機能障害の等級は、3級と5級のみ設定されています。

聴覚または平衡機能の障害の等級は以下の通りです。

【聴覚または平衡機能の障害の等級】
基準
等級 聴覚障害 平衡機能障害
1級
2級 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)
3級 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介に接しなければ大声語を聞き取れないもの) 平衡機能の極めて著しい障害
4級 1.両耳の聴力レベルがそれぞれ80デシベル以上のもの(耳介に接しなければ話声語を聞き取れないもの)
2.両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
5級 平衡機能の著しい障害
6級 1.両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語を聞き取れないもの)
2.一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上のもの
7級

※参照:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害

音声機能、言語機能の障害とは、「話す」「聞く」「読む」「書く」機能に障害があり、音声もしくは言語のみを用いて意思疎通を図ることが難しい状態を指します。

そしゃく機能の障害とは、食べ物を噛み砕いて飲み込む「そしゃく・嚥下機能」に障害があり、食事の内容や方法に著しい制限がある状態などを指します。

音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害等級は、3級と4級が設定されています。

【音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害の等級】
等級 基準
1級
2級
3級 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の喪失
4級 音声機能、言語機能またはそしゃく機能の著しい障害
5級
6級
7級

※参照:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

内部障害

内部障害とは、体の内部に障害がある状態のことです。身体障害者福祉法により、以下の7つの障害が内部障害に当たります。

・心臓機能障害
・じん臓機能障害
・呼吸器機能障害
・ぼうこうまたは直腸の機能障害
・小腸機能障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
・肝臓機能障害

内部障害の認定基準は、以下の通りです。
障害別に1級、3級、4級の3つの基準が設けられています。

【内部障害の等級】
基準
等級 心臓機能障害/じん臓機能障害/呼吸器機能障害/ぼうこうまたは直腸の機能障害/小腸機能障害 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害/肝臓機能障害
1級 上記の障害により身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 上記の障害により日常生活がほとんど不可能なもの
2級
3級 上記の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 上記の障害により日常生活が著しく制限されるもの(社会での日常生活活動が著しく制限されるものを除く)
4級 上記の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの 上記の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
5級
6級
7級

※参照:厚生労働省「身体障害者障害程度等級表(身体障害者福祉法施行規則別表第5号)

身体障害のある人が利用できるサービス・制度

身体障害のある人が受けられる可能性のあるサービスや制度には、主に以下のようなものがあります。

1.障害年金
2.相談支援事業
3.自立訓練(機能訓練)
4.生活介護
5.自立支援医療(更生医療)
6.障害者控除(所得税・住民税の減免)
7.公共料金や公共交通機関運賃の割引
8.補装具費・日常生活用具給付制度
9.心身障害者医療助成制度 など

上記サービス・制度のうち、5~9は障害者手帳の取得が必須となります。また、自治体や障害の状況・重症度などによって受けられるサービス・内容が異なるため、自身が該当するかどうかはお住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認しましょう。

身体障害のある人が利用できる就労サービス・制度

身体障害のある人が利用できる可能性のある、就労系サービスや制度について紹介します。

1.ハローワーク
2.障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
3.地域障害者職業センター
4.就労継続支援A型・B型
5.就労移行支援
6.障害者雇用枠での就職・転職

上記サービス・制度のうち、障害者手帳が必須となるのは、6の障害者雇用枠での就職・転職です。

1.ハローワーク

ハローワークは、国が運営する仕事探しの機関です。障害特性に詳しい専門員のいる、障害者専門窓口もあります。求人数や就職件数が多く、障害者雇用枠の求人紹介のほか、障害のある人を対象にしたはたらき方に関する相談や面接対策などもおこなっています。

2.障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)は、障害のある人の就業面と生活面の一体的な相談・支援をおこなう機関です。就職に向けた準備支援から職場実習の紹介、就職後の職場への定着についての支援もおこなっています。

3.地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害者一人ひとりに合わせて、職業評価・職業準備支援などの支援をおこなう機関です。仕事を探している人の支援だけでなく、はたらく中で悩みや不安をもつ人や仕事に復帰したい人の支援もおこなっています。全国の都道府県に1カ所ずつ設置されており、就職を目指す身体障害のある人も気軽に相談できます。

4.就労継続支援A型・B型

就労継続支援とは、障害や疾患などで一般企業へ就労することが難しい人のために提供される福祉サービスです。はたらく場を提供しながら、同時に知識・能力の向上のための訓練をおこなうのが特徴です。

就労継続支援事業所には「A型」と「B型」の2種があり、A型事業所ではたらく人には給与の支払いが発生し、B型事業所ではたらく人には工賃の支払いが発生します。

※関連記事:『就労継続支援A型とは?利用方法や他サービスとの違いについて
※関連記事:『就労継続支援B型とは?事業所の選び方や就労移行支援との違いも解説

5.就労移行支援

就労移行支援とは、「一般企業ではたらきたい」という障害や難病のある人を対象に、就労に向けたトレーニングや就職活動のサポートをおこなう福祉サービスです。就労継続支援を利用している人が、就労移行支援に切り替えることもできます。

就労移行支援事業所に通いながら、自分の障害特性の理解を深めたり、ビジネスマナーを身につけたり、面接練習や履歴書対策など就職活動のサポートを受けられます。就職後の定着支援により、長くはたらき続けるためのサポートもしています。

※関連記事:『就労移行支援とは

6.障害者雇用枠での就職・転職

障害者雇用とは、障害のある人が障害のない人と同様にはたらく機会を得られるよう、自治体や企業が特別な採用枠で雇用することを指します。障害があることを前提としているため、障害者手帳を取得している人が対象で、一般雇用とは異なる採用基準での就職となります。

障害者雇用枠で就職・転職することで、通院や治療に配慮してもらえたり、周囲の理解が得やすかったりと、障害に応じた調整を会社にお願いしやすくなるのが特徴です。

※関連記事:『障害者雇用ではたらくとは?一般雇用との違いや障害者手帳の種類についてまとめました

身体障害者手帳について

身体障害者手帳とは、都道府県、政令指定都市、中核市などの自治体が身体上に障害のある人に発行する手帳です。身体障害者福祉法に基づいて区分された等級の、1級〜6級の人が交付対象となります。ただし、同級の障害が複数ある場合は1級繰り上がるため、7級の障害が2つある人は6級となり、手帳交付の対象です。

身体障害者手帳を利用することで、医療費の助成や税金の減免、交通運賃の割引、障害福祉サービスの利用など、さまざまなサービスや制度を利用できます。

また、障害者雇用枠で就労する場合、障害者手帳は必須となります。

身体障害者手帳の取得により受けられるサービスや制度について詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。

※関連記事:『身体障害者手帳とは?申請方法や取得するメリット・デメリットを紹介

身体障害のある人の就職を支援する「ミラトレ」

身体障害について、種類や等級、利用できるサービスについて解説しました。身体障害の種類はさまざまあり、それぞれの症状や程度によって等級が設けられています。人によって状況が異なり、困りごとも一人ひとり異なります。日常生活や仕事に支障をきたしている場合は、専門の支援機関や福祉サービスの活用をおすすめします。

また、身体障害があっても、就労移行支援事業所などではたらく準備やトレーニングをおこなうことにより、自分自身の特性や得手不得手の理解にもつながります。長くはたらき続けるためにも、自分の特性に合わせたはたらき方の選択が不可欠です。

就労移行支援事業所「ミラトレ」では、障害のある人が自分らしいはたらき方を見つけ、長くはたらき続けられるようサポートしています。利用者の障害特性を理解した上で一人ひとりの課題や能力に配慮しながら、就職までの準備はもちろん、職場への定着まで総合的に支援します。

これから身体障害者手帳を取得して障害者雇用枠の就職を目指したいという方は、就労移行支援事業所に通所しながら障害者手帳を取得できます。就労移行支援事業所「ミラトレ」でも、身体障害に関する情報提供や身体障害者手帳の取得をサポートしています。お気軽にご相談ください。

執筆 : ミラトレノート編集部

パーソルダイバースが運営する就労移行支援事業ミラトレが運営しています。専門家の方にご協力いただきながら、就労移行支援について役立つ内容を発信しています。